インドと韓国の美味に欠かせないもの、それは唐辛子。ところが唐辛子の原産はメキシコを中心とした中南米地域であり、これをポルトガル人がヨーロッパに持ち帰ったことから世界に広まったとされています。ということは少なくとも16世紀の初めまで、ヨーロッパにもインドにも韓国にも唐辛子はなかったことになります。そういえば料理人から医者となった女性の生涯を描いた「宮廷女官チャングムの誓い」という韓流ドラマがありました。ドラマの中には数々の宮廷料理を作る場面が出てきましたがついに唐辛子が使われるシーンが一度もなかったと記憶します。もしあったらそれは事実と異なります。なぜならこのドラマの舞台となったころの朝鮮半島にはまだ唐辛子が伝えられていませんでした。朝鮮半島に唐辛子をもたらしたのは秀吉の朝鮮出兵の際の日本の武将たちと言われています。このころ日本にはすでにポルトガル人と交易をしていて唐辛子も持ち込まれていました。日本には辛み成分として山椒があったため唐辛子は食用として珍重されませんでした。ところがこの唐辛子の成分に目を付けたのが加藤清正らで「唐辛子製目つぶし爆弾」を作り出して朝鮮半島で実際に使用しました。さらに止血剤としても利用したんだとか。爆弾として使った唐辛子の種子が朝鮮半島で根付いて育つようになり、それをいつしか食用とするようになったようです。以前よく通っていたソーホーの韓国料理店のオーナー、キムさんから「秀吉が朝鮮半島に唐辛子を持ち込んだんだよ」と聞かされた時はリップサービスか冗談かと思いました。その後調べてみたらなんとほんとのことでした。研究者の中には朝鮮料理に欠かせない唐辛子が日本から持ち込まれたのだという事実を受け入れられない人もいて、朝鮮出兵より古い文献の中に唐辛子っぽいものを見つけては「唐辛子は秀吉が来る前から朝鮮半島に自生していた」と反論を試みているようですが、国内でもその矛盾が指摘されているようです。ま、稲作みたいに平和的に伝播されたわけじゃないみたいなので、あんまり韓国の人たちに「朝鮮半島に唐辛子をもたらしたのは日本なんだぞ!」なんて自慢しない方が日韓友好のためには良さそうなお話。しかしトマトやじゃがいも唐辛子など、今ではどの国の食生活にも欠かせない植物が実はかつて中南米でしか自生していなかったというものがたくさん存在します。なぜ中南米に集中しているんでしょう。6500万年くらい前、中米ユカタン半島に巨大隕石が衝突したと言われています。この時の隕石がなんかいろんなものを宇宙から運んできたんじゃないかしら。トマトもイモも唐辛子も宇宙から来たのかも、なんて妄想すると楽しいですね。地球って奥が深い。いや、宇宙はもっと深いけど。
クックバズ